ここでは、整式とはどのようなものなのか、整式とそうでない式の違いについて解説します。
単項式
例えば、\(4xy\)は数の\(4\)と文字の\(x,\,y\)の積、すなわち掛け算なので単項式です。また、\(-7\)のような数のみの式や、\(a\)のような文字のみの式も単項式です。
多項式と項
例えば、\(5a+6b\)は単項式\(5a\)と単項式\(6b\)の和、すなわち足し算なので多項式です。また、\(7x^2-8y^2\)は単項式\(7x^2\)と単項式\(8y^2\)の引き算で表されます。引き算は「負の数の足し算」と考えることができるので、これも多項式です。
例えば、\(5a+6b\)の場合、項は\(5a\)と\(6b\)です。
\(7x^2-8y^2\)の項はどうなるでしょうか。多項式の項どうしは足し算で繋がれていなければいけません。そして、先程触れましたが、引き算は「負の数の足し算」と考えます。つまり、\(7x^2-8y^2\)の項は\(7x^2\)と\(-8y^2\)の2つになります。
より簡単に書くならば、多項式の\(+\)や\(-\)の手前で式を区切っていったときにできるパーツ1つ1つが項となります。
整式と整式ではない式
ここまでに挙げた\(4xy,\,-7,\,a,\,5a+6b,\,7x^2-8y^2\)はいずれも整式です。
一方、整式ではない式というのも存在します。例えば、\(\sqrt{5x\,}\)は整式ではありません。根号(ルート)の中の\(5x\)という式は\(5\)と\(x\)の積なので単項式ですが、そこに根号がかぶさっています。「根号をかぶせる」というのは数や文字を掛け合わせてできるものではないので、\(\sqrt{5x\,}\)は整式ではありません。
また、\(\dfrac{3}{\,x\,}\)も整式ではありません。\(\dfrac{3}{\,x\,}\)は\(3\)を\(x\)で割った式です。掛け算ではなく割り算でできた式なので、整式ではありません。「割り算は逆数の掛け算で表現できるじゃないか」と思われるかもしれませんが、\(x\)の逆数は\(\dfrac{1}{\,x\,}\)になります。単項式は「数単体や文字単体を掛け合わせてできる式」ですが、\(\dfrac{1}{\,x\,}\)は数単体でも文字単体でもない式なので、これを掛けてしまうと整式ではなくなってしまうのです。
他にも、つぎに挙げる式は整式ではありません。
※実は\(\sin x\)などは「テイラー展開」というものを使うと多項式に分解(正確には近似)してしまえたりするのですが……高校数学を超えてしまうのでここでは詳しく触れません。気になる人は調べてみてください。
練習問題
文字式が整式かどうかを見分ける練習と、多項式を項に分ける練習をしてみましょう。
問題
解説
【問1】
(1)\(+\)や\(-\)の前で式を区切ってみましょう。\(4s^3\)は\(4\)と\(s\)を3回かけ合わせたものなので単項式です。\(-5st^2\)は\(-5\)と\(s\)と\(t\)を2回かけ合わせたものなので、これも単項式です。\(9u^2\)も\(9\)と\(u\)を2回かけ合わせたものなのでやはり単項式です。\(4s^3-5st^2+9u^2\)は、これら3つの単項式を足し合わせた式なので、多項式となります。
(2)\(7p\)は\(7\)と\(p\)を掛けたものなので単項式ですが、\(\sqrt{7p\,}\)はそこに根号がかぶさっているので、整式ではありません。
(3)(2)との違いに気をつけてください。これは \(\sqrt{13\,}\)という数と\(q\)という文字を掛けたものなので単項式です。根号があると絶対に整式ではない、というわけではありません。根号がかぶさっているのが数の部分だけであれば、整式です。根号が文字にもかぶさっているとき、その根号を外すことができなければ整式ではない式です。
(4)\(+\)の前後で式を分けてみます。\(ax\)は\(a\)と\(x\)をかけ合わせたものなので、単項式です。\(b\sqrt{y\,}\)は\(\sqrt{y\,}\)という文字に根号がかぶさったものが掛けられているので、整式ではありません。整式ではないものを含めて足し算してしまっているので、\(ax+b\sqrt{y\,}\)は整式ではありません。
(5)この式は\(\dfrac{\,6\,}{5}a^4-\dfrac{\,8\,}{5}\)と変形することができます。\(\dfrac{\,6\,}{5}a^4\)は、分数\(\dfrac{\,6\,}{5}\)に\(a\)を4回掛けたものです。分数も立派な数の仲間ですから、これは単項式です。\(-\dfrac{\,8\,}{5}\)も数単体なので単項式と考えることができます。以上から、\(\dfrac{\,6\,}{5}a^4-\dfrac{\,8\,}{5}\)は単項式を足し合わせたものであることがわかったので、多項式となります。そして、これと等しい式である\(\dfrac{\,6a^4-8\,}{5}\)も多項式です。
(6)この式も\(\dfrac{5}{\,3m\,}k^2+\dfrac{6}{\,3m\,}l\)と変形することができます。しかし、\(\dfrac{5}{\,3m\,}\)も\(\dfrac{6}{\,3m\,}\)も分母に文字が入ってしまっています。分母が数だけであれば、分数全体を1つの数と捉えることができますが、分母に文字が入ってしまうと「文字で割る」ということをしなければならず、掛け算だけで表現できているということができません。分母に文字を含む分数が入った式は、その文字が約分などで消えない限り整式ではありません。
【問2】
問1で多項式だったのは、(1)と(5)です。多項式を項に分けるには、\(+\)や\(-\)の前で式を区切るのでした。問1でもすでに実演していますが、改めて確認しましょう。
(1)\(4s^3\,\mid\,-5st^2\,\mid\,+9u^2\)と区切ることができ、このそれぞれが項となります。答えるときには、項の先頭の\(+\)は省略するのが一般的です。
(5)このような分数の式の場合は、分母を分配しましょう。$$\frac{\,6a^4-8\,}{5}=\frac{\,6\,}{5}a^4-\frac{\,8\,}{5}$$と変形できますので、(1)と同様に\(-\)の前で区切ると、\(\dfrac{\,6\,}{5}a^4\)と\(-\dfrac{\,8\,}{5}\)の2つの項を得ます。
解答
【問1】
(1)多項式
(2)整式ではない
(3)単項式
(4)整式ではない
(5)多項式
(6)整式ではない
【問2】
(1)\(4s^3,\,-5st^2,\,9u^2\)
(5)\(\dfrac{\,6\,}{5}a^4,\,-\dfrac{\,8\,}{5}\)
補足
文字を変数と扱うか定数と扱うかで、整式かどうかが変わる場合がある
ここまでの式では、登場する文字をすべて文字として、すなわち変数として扱いましたが、一部の文字を定数として数と扱う場合、整式でなかった式が整式に変わる場合があります。
練習問題の(4)式\(ax+b\sqrt{y\,}\)の場合を考えます。この式は、すべての文字を変数とした場合は整式ではありません。しかし、例えば\(x,\,y\)を定数として扱う場合、\(ax\)は数\(x\)と文字\(a\)の積、\(b\sqrt{y\,}\)は数\(\sqrt{y\,}\)と文字\(b\)の積となり、いずれも単項式となります。したがって、\(ax+b\sqrt{y\,}\)は多項式となります。\(y\)を数として見るようになった結果、\(\sqrt{y\,}\)が\(\sqrt{6\,}\)などと同じ、中に数が入った根号となり、数として扱えるようになるわけです。
ある文字を変数として扱うか、定数として扱うかは問題で指定されている場合もありますが、問題を考察していく中で自分で変数か定数かを切り替えながら解いていく場合もあります。どの文字を変数として、あるいは定数として見ているのか常に意識していきましょう。
整式の厳密な定義
※この項目には数学Ⅱの学習内容が含まれます。
数学Ⅱの指数の分野を学習した人の中には、このような疑問を持つ人がいるかもしれません。
\(\sqrt{x\,}\)は\(x^\frac{1}{2}\)、\(\dfrac{1}{\,x\,}\)は\(x^{-1}\)というように、ルートや分数も\(x\)の累乗にできるのに、これらは整式じゃなくて、\(x^2\)や\(x^3\)は整式になる。何が違うの?
先に述べたように、\(\sqrt{x\,}\)や\(\dfrac{1}{\,x\,}\)は整式ではないのですが、これらが\(x\)の累乗で表されることを知ると、混乱してしまうようです。整式をより厳密に、数式を用いて定義すると次のようになります。
\(x\)の指数に注目してください。順に\(n,\, n-1,\, \cdots ,\, 1,\, 0\)となっています。\(n\)は\(0\)以上の整数ですので、これは\(0\)から\(n\)までの整数ということになります。現れる指数はすべて\(0\)か正の整数ですので、指数が分数である\(\sqrt{x\,}=x^\frac{1}{2}\)や負の数である\(\dfrac{1}{\,x\,}=x^{-1}\)は整式ではないということなのです。