ここでは、整式の次数や係数、定数項の求め方、および降べきの順への整理のしかたについて解説します。
単項式の次数と係数
次数は文字の掛けられた個数であって、文字の種類の数ではありません。(1)で次数を\(2\)と答えないように気をつけてください。なお、次数が\(n\)である式を\(n\)次式と言います。\(-6x^3y^2\)は5次式です。
\(2\)や\(-7\)といった数だけの式も単項式でした。このような数だけの単項式は、文字が掛けられていませんので次数は\(0\)となります。また、係数はそれぞれ\(2\)や\(-7\)をそのまま答えます。ただし、\(0\)の次数は例外的に考えない、すなわち次数がないものとします。これがなぜなのかは補足↓で説明します。
さて、これだけなら簡単なのですが、ここから「特定の文字に着目する」ということについて考えていきます。初めて勉強する人には慣れない考え方かもしれませんが、高校数学で必須の考え方なので是非マスターしてください。
特定の文字に着目して次数・係数を考える
「特定の文字に着目する」とはどういうことでしょうか。これは言い換えると、「着目するもの以外の文字は数と同じ扱いをする」ということです。次の例を見て、特定の文字に着目したときの次数と係数の求め方を確認してください。
特定の文字に着目しているときはその文字だけを文字とみなし、それ以外の文字は数として扱います。上の例のように、同じ式でもどの文字に着目するかによって次数や係数が変わります。
どの文字に着目して式を見るかによって、その見え方は変わります。このことは、数学の問題を解く上で非常に重要です。式の見方を様々変えてみながら、もっとも解きやすい式の捉え方はどれなのかを考えながら問題を解いていくことになるのです。
なお、数学的な言葉を用いると着目している文字のことは「変数」、そうでない数と同じ扱いをしている文字は「定数」と言います。変数と定数の扱いの違いは高校数学における重要なテーマの1つです。
練習問題①
単項式の次数と係数について確認しましょう。
問題
解説
(a)(1)文字は\(a\)が1個、\(x\)が1個、\(y\)が3個あるので、次数は\(1+1+3=5\)より\(5\)です。係数は数の部分である\(12\)です。
(a)(2)\(x\)ではない文字、\(a\)と\(y\)は数と扱います。次数は\(x\)の個数を数えて\(1\)であり、係数は\(12ay^3\)となります。
(a)(3)複数の文字に着目する場合も、考え方は同じです。\(x\)と\(y\)以外の文字である\(a\)は数と扱います。次数は\(x\)と\(y\)の個数を合わせて\(4\)であり、係数は\(12a\)となります。
(b)(1)文字は\(b\)が1個、\(x\)が2個、\(y\)が4個あるので、次数は\(1+2+4=7\)より\(7\)です。係数についてですが、数に当たる部分が\(-\)しかありませんが、これではただの記号であり数ではありません。ここは、文字式の表記のルールを思い出してください。\(1\)や\(-1\)と文字の積を書き表すとき\(1\)を省略するルールが有りました。今回の\(-\)はこのルールによって省略された\(-1\)なのです。したがって、係数は\(-1\)です。
(b)(2)\(x\)ではない文字、\(b\)と\(y\)は数と扱います。次数は\(x\)の個数を数えて\(2\)であり、係数は\(-by^4\)となります。
(b)(3)\(x\)と\(y\)以外の文字である\(b\)は数と扱います。次数は\(x\)と\(y\)の個数を合わせて\(6\)であり、係数は\(-b\)となります。
(c)(1)一見文字に見える\(\pi\)ですが、これは\(3.14159\cdots\)という特定の数を指すときに代わりに用いられるものです。1つの数を表現したものですから、数として扱わなければいけません。対して、\(t\)や\(y\)は中にいろんな数が入る可能性があるので文字として扱う必要があります。ゆえに、次数は\(t\)が1つと\(y\)が2つをあわせて\(3\)となり、係数は\(\pi\)となります。
(c)(2)\(x\)ではない文字、\(t\)と\(y\)は数と扱います。もちろん、\(\pi\)も数として扱います。式の中に\(x\)がありませんので、次数は\(0\)です。すべての文字を数として扱っているので、係数は\(\pi ty^2\)と元の式の形をそのまま答えることになります。
(c)(3)\(x\)と\(y\)以外の文字である\(t\)は数と扱います。次数は\(y\)の個数の\(2\)であり、係数は\(\pi t\)となります。
解答
(a)
(1)次数:\(5\)係数:\(12\)
(2)次数:\(1\)係数:\(12ay^3\)
(3)次数:\(4\)係数:\(12a\)
(b)
(1)次数:\(7\)係数:\(-1\)
(2)次数:\(2\)係数:\(-by^4\)
(3)次数:\(6\)係数:\(-b\)
(c)
(1)次数:\(3\)係数:\(\pi\)
(2)次数:\(0\)係数:\(\pi ty^2\)
(3)次数:\(2\)係数:\(\pi t\)
多項式の次数と定数項
多項式の次数について説明する前に、同類項について説明します。
同類項を探すときには、文字の種類ごとに次数をチェックすることが重要です。例えば、\(2x^3y\)と\(3x^2y^2\)はいずれも次数が\(4\)ですが、\(2x^3y\)は\(x\)が3次、\(y\)が1次であるのに対し、\(3x^2y^2\)は\(x\)が2次、\(y\)が2次ですので、文字ごとの次数は異なります。ゆえに、これらは同類項ではありません。また、\(-4xy^3\)と\(6xy\)については、\(x\)の次数はいずれも\(1\)で同じですが、\(y\)の次数が\(3\)と\(1\)で両者で異なるので、これらも同類項ではありません。すべての文字の種類で次数が等しくなっている必要があります。
ただし、一部の文字に着目している場合、着目している文字の次数が一致していればそれ以外の文字の次数は異なっていても構いません。なぜならば、着目していない文字は数として扱っていて、文字としては見ていないからです。
特定の文字に着目して同類項をまとめる場合、着目している文字はアルファベット順を無視してでも後ろにくくりだすのがポイントです。これにより、前に数(と扱っている部分)、後ろに文字というふうに書き方が統一されます。パッと見ではあまり簡単になっているようには見えませんが、特にこのあと学習する「因数分解」ではこのまとめ方が非常に重要です。
同類項のまとめ方について学習したので、これを踏まえて多項式の次数について見ていきましょう。
多項式の次数を求めるときは、必ず同類項をまとめてから各項の次数を数えます。なぜでしょうか。\(3x^2-5x^3+4+2x^3-6x+3x^3-x^2\)という多項式で次数を求めてみましょう。もし、同類項をまとめないまま次数を求めるなら、項の次数の最大は\(3\)なので、この多項式は3次式です。では、同類項をまとめてみましょう。
$$ \begin{align*} &\,3x^2-5x^3+4+2x^3-6x+3x^3-x^2\\ =&\,(3-1)x^2+(-5+2+3)x^3+4-6x\\ =&\,2x^2+0\cdot x^3+4-6x \end{align*} $$
3次の項の係数が\(0\)になってしまいました。\(0\)にどんな数を掛けても\(0\)になります。今後、この式を利用する際に\(x\)に様々な値を入れて式の値の変化を見るということをするでしょうが、\(0\cdot x^3\)という項はどんな\(x\)を入れてもその値が\(0\)となり計算結果に影響を与えません。となると、この項を残す価値はもはやありません。次数を考えるときにもこの項は無視するのが妥当でしょう。したがって、残り3つの項の中で最大の次数である2がこの多項式の次数となります。
このように、同類項をまとめると係数が\(0\)になって項が消えてしまうことがあります。項が消えると項の最も大きな次数が変化する場合があります。ゆえに、同類項をまとめて消える項を消してから次数を考えるべきなのです。
最後に、定数項について説明します。
定数項は、着目している文字に代入する値が変わってもが変わらない部分です。この性質が問題を解くときに利用されることがあります。
練習問題②
多項式の次数と定数項を求める練習をしましょう。
問題
解説
(a)(1)2次の項どうしである\(-x^2\)と\(x^2\)、\(x\)を含まない項どうしである\(8\)と\(4\)をまとめることができます。
$$ \begin{align*} &\,4x^3-x^2+8+x^2-6x+4\\ =&\,4x^3+(-1+1)x^2+(8+4)-6x\\ =&\,4x^3+12-6x \end{align*} $$
(a)(2)各項の次数について、\(4x^3\)は3次、\(12\)は0次、\(-6x\)は1次なので、最も大きな次数は\(3\)です。また、定数項は文字を含まない(すなわち次数が\(0\)である)\(12\)です。
(a)(3)この式に登場する文字は\(x\)のみですので、(2)と状況は何ら変わっていません。(2)の答えがそのまま(3)の答えになります。
(b)(1)同類項であるのは、\(x^3\)と\(-x^3\)(\(a\)0次・\(x\)3次)、\(-5a^2x\)と\(4a^2x\)(\(a\)2次・\(x\)1次)、\(6a^3\)と\(7a^3\)(\(a\)3次・\(x\)0次)の3組です。
$$ \begin{align*} &\,x^3+8ax^2-5a^2x+6a^3-x^3+4a^2x+7a^3\\ =&\,(1-1)x^3+8ax^2+(-5+4)a^2x+(6+7)a^3\\ =&\,8ax^2-a^2x+13a^3 \end{align*} $$
(b)(2)各項の次数について、\(8ax^2\)は3次、\(-a^2x\)は3次、\(13a^3\)も3次なので、最も大きな次数は\(3\)です。また、すべての項が何らかの文字を含んでいるので、定数項はありません。
(b)(3)各項の\(x\)の次数について、\(8ax^2\)は2次、\(-a^2x\)は1次、\(13a^3\)は0次なので、最も大きな次数は\(2\)です。また、定数項は\(x\)を含まない\(13a^3\)です。\(x\)が3次の項は同類項をまとめたときに消えている点に注意してください。
(c)(1)同類項であるのは、\(-tx\)と\(tx\)(\(t\)1次・\(x\)1次)の1組だけです。
$$ \begin{align*} &\,3x^2-tx+5t^2-2tx^2+tx-4t+6\\ =&\,3x^2+(-1+1)tx+5t^2-2tx^2+tx-4t+6\\ =&\,3x^2+5t^2-2tx^2-4t+6 \end{align*} $$
(c)(2)各項の次数について、\(3x^2\)は2次、\(5t^2\)は2次、\(-2tx^2\)は3次、\(-4t\)は1次、\(6\)は0次なので、最も大きな次数は\(3\)です。また、定数項は文字を含まない\(6\)です。
(c)(3)各項の\(x\)の次数について、\(3x^2\)は2次、\(5t^2\)は0次、\(-2tx^2\)は2次、\(-4t\)は0次、\(6\)は0次なので、最も大きな次数は\(2\)です。また、定数項は\(x\)を含まない\(5t^2-4t+6\)です。
解答
(a)
(1)\(4x^3+12-6x\)
(2)次数:\(3\)定数項:\(12\)
(3)次数:\(3\)定数項:\(12\)
(b)
(1)\(8ax^2-a^2x+13a^3\)
(2)次数:\(3\)定数項:なし
(3)次数:\(2\)定数項:\(13a^3\)
(c)
(1)\(3x^2+5t^2-2tx^2-4t+6\)
(2)次数:\(3\)定数項:\(6\)
(3)次数:\(2\)定数項:\(5t^2-4t+6\)
降べきの順
降べきの順は、多項式を整理して見やすくする書き方の中で最も使われるほうほうです。なぜ降べきの順を用いるかは 補足↓ で解説することにして、ひとまず降べきの順の例を見てみましょう。
降べきの順にするには、まず1つの文字に着目し、その文字についての同類項をまとめてから次数の大きい順に項を並び替えます。
練習問題③
多項式を降べきの順に整理する練習をしましょう。
問題
解説
(1)\(a\)の次数が大きい順に項を並べると、\(2a^5\)[5次], \(5a^3\)[3次], \(-a^2\)[2次], \(-4a\)[1次], \(3\)[0次]となります。この順に項を書き並べば降べきの順になります。
(2)\(a\)の次数が大きい順に項を並べると、\(a^3\)[3次], \(-3a^2b\)[2次], \(a^2\)[2次], \(3ab^2\)[1次], \(-2ab\)[1次], \(a\)[1次], \(-b^3\)[0次], \(+b^2\)[0次], \(-b\)[0次], \(1\)[0次]となります。次数が同じ項は同類項ですので、係数をまとめましょう。2次の項は$$-3a^2b+a^2=(-3b+1)a^2$$1次の項は$$3ab^2-2ab+a=(3b^2-2b+1)a$$とまとめられます。0次の項(定数項)はくくり出す\(a\)がないので、カッコでまとめればOKです。最後に、\(a\)の次数の大きい順に項を並べましょう。
解答
$$\begin{align*}(1)\;&2a^5+5a^3-a^2-4a+3\\(2)\;&a^3+(-3b+1)a^2+(3b^2-2b+1)a+(-b^3+b^2-b+1)\end{align*}$$
補足
なぜ\(0\)の次数は考えないのか
一般に、整式の積の次数について次のことが成り立ちます。
2つの整式の積の次数は、それぞれの整式の次数の和に等しい。
例えば、\(x^2 \times x^3 = x^5\)という掛け算で次数に注目すると\(2+3=5\)というように次数の足し算が成立しています。では、\(0\)の次数が\(a\)であるとして同様に整式の積の次数について考えてみましょう。\(0 \times x^2 = 0\)という掛け算の次数を考えると、\(a+2=a\)という足し算になります。少し考えればわかると思いますが、この等式を満たす実数\(a\)は存在しません。このように、整式の積の次数に関する法則が\(0\)に限って成り立たないため、\(0\)の次数は考えないことになっています。
多項式の次数を求めるときに、項の次数のうち、なぜ最も大きなものにだけ注目するのか
多項式の次数は、項の次数のうち最も大きなものになるのでした。なぜ、最も大きなものだけに注目するのかというと、その次数が整式の大まかな特徴を決定づけるからです。
例えば、次の3つの1次方程式はどのような手順で解くでしょうか。
$$ \begin{align*} x-3&=0\\ 2x+5&=0\\ \sqrt{439}x-\frac{4567}{\pi}&=0 \end{align*} $$
係数や定数項がどれも異なりますが、いずれも次の手順によって解くことができるはずです。
- 定数項を右辺に移項する。
- \(x\)の係数で両辺を割る。
同じ解き方をするということは、この3つの方程式は仲間であると言うことができます。また、それぞれの方程式の左辺だけを取り出せば整式となりますが、その3つの整式もまた仲間であるべきでしょう。実際、これらは1次式という仲間であり、最も大きな次数が1であるという特徴が共通しています。
では、次の3つの2次方程式についてはどうでしょうか。
$$ \begin{align*} x^2-5x+4&=0\\ 3x^2-8&=0\\ 5x^2-8\sqrt{2}x&=0 \end{align*} $$
方程式によってどの解法が浮かぶかが違うかもしれませんが、少なくともいずれの2次方程式も「解の公式を使えば(計算は大変かもしれないが)解くことができる」ということは言えるはずです。よって、この3つの方程式の左辺に登場する整式は2次式という仲間になります。注目してほしいのは、それぞれの整式に何次の項が登場しているかです。1つ目の整式には2次の項、1次の項、定数項がすべて登場しています。一方、2つ目の整式には1次の項がなく、3つ目の整式には定数項がありません。しかし、それぞれの整式からなる方程式は解の公式という共通の解法を持っています。このことから、最大の次数が共通であれば、その他に何次の項があるかは整式の大きな特徴づけにはならないことがわかります。
また、2次方程式に先程の1次方程式の解法を当てはめて解くことはできません。このことは、1次式と2次式が全く異なる性質を持ち、区別するに値するということの根拠の1つになります。
他にも、グラフの形も大きく異なります。一次関数のグラフは直線ですが、二次関数は放物線と呼ばれる曲線を描きます。さらに、三次関数は直線でも放物線でもないまた別の曲線を描きます。
これらは例の1つに過ぎませんが、多項式を分類する上で、項の次数の最大値というのは最も重要な分類基準なのです。ゆえに、その値に次数という名前を与えられたのです。
なぜ降べきの順に整理するのか
実を言うと、「整式は降べきの順に整理しなければならない」というルールが決められているわけではありません。皆さんが答えに次数の順番がバラバラの状態で式を書いても、内容が同じであれば、降べきの順に整理する問題でない限りは正解にしてくれます。もしバツにされたら、その先生は意地悪です。少なくとも大学入試の採点官は、減点することはあっても直ちにバツにはしないでしょう。(ただし、同類項がまとめきれていない場合は計算途中とみなされてバツになる可能性が高いです。)
では、なぜ降べきの順を教わるのでしょうか。記事作成者が思う理由の1つは式の最も見やすい形を知るためです。数学というのは、与えられた情報を自分の中で分析して論理的に思考を膨らませることで問題を解いていきます。その過程で、式を変形していくことになりますが、次数の順番がバラバラな式と、きちんと順番通りになっている式では考えやすさが全く異なります。高校数学を学び始めたばかりで問題を解く経験があまりない方には想像できないかもしれませんが、問題をたくさん解いていけば自然と実感してもらえると思います。また、式を紙の上に書いたときの見た目も整っているので、採点もやりやすいでしょう。
次数の順番がきちんと並んでいる方がわかりやすいとしたとき、その並べ方として降べきの順の他にもう1つわかりやすそうな並べ方がないでしょうか。それは降べきの順の逆の並べ方、つまり、次数が小さい順に並べる書き方です。これは昇べきの順と呼ばれます。次数の順番を整えるという目的を達成するなら昇べきの順で整理してもよいはずです。
しかし、実際には圧倒的多数の場合において昇べきの順ではなく、降べきの順が採用されます。なぜでしょうか。それは、多項式の次数を素早く知ることができるからです。式を左から読んでいったときに一番最初に次数が最も大きい項が来るので、その項を見るだけで多項式の次数を決定できます。次数というのは多項式において最も重要な情報なので、少しでも先に知りたいわけです。昇べきの順では次数が最も大きい項が一番最後になってしまうので、長い式だとなかなか次数がわかりません。それでは不便なので、降べきの順が用いられるようになったのです。
ただし、始めに言った通り降べきの順は絶対的なルールではありません。状況によっては昇べきの順のほうが好まれることもあります。代表的なのは、以下の2つです。
1つ目は変数に代入する値の絶対値が非常に小さい場合です。これは、数学よりは物理でよく起こるケースです。例えば、\(x^3+x+1\)という式の大まかな値が知りたいとします。もし\(x\)が100万なら、\(x^3\)は100京ですから\(x^3+x+1\)はほとんど100京です。\(x^3+x+1\)の中で\(x^3\)の値が占める割合が非常に大きく、\(1\)はなくてもほとんど値が変わりません。こういった場合は降べきの順で書くのが適切です。これに対し、\(x\)が100万分の1だとしましょう。すると、\(x^3\)は100京分の1というごく僅かな数にしかなりません。\(x^3+x+1\)の中で\(1\)が値の大部分を占め、\(x^3\)はほとんど無いようなものです。このような場合、\(1\)のほうがより重要な情報だと考えられるので、\(1+x+x^3\)と書くほうが適切です。このように、変数に代入する値の絶対値が\(1\)よりずっと小さいことがわかっている場合、次数が高い項ほど値が小さくなるので値が大きな項を重視するために昇べきの順で書くことがよくあります。
もう1つは、最大の次数がわからない、あるいは無限に大きくなる場合です。一番大きな次数をもつ項が決められないので次数の小さい方から書いていくというわけです。高校数学ではなかなか遭遇しないケースですが、大学数学ではそれなりの頻度で目にします。中でも代表的なのが、テイラー展開・マクローリン展開です。大学数学の範囲かつ話の本筋ではないので、これらが何者なのかは説明しませんが、テイラー展開やマクローリン展開を行うと、次数が無限に大きくなる式を得られます。その結果を示すときには、昇べきの順で式を書きます。以下は、\(\sin x\)のマクローリン展開の式です。右辺が昇べきの順になっていることを確かめてください。
$$\sin x=x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\cdots$$