数式が見切れる場合は左右にスワイプしてください
数と式

整式の展開②(公式の利用)

ここでは、公式を利用した展開について解説します。

展開の公式を覚える意義

展開の公式(乗法公式とも呼ばれます)を紹介する前に、なぜ展開の公式を覚えなければならないのか、その理由を説明します。

究極的なことを言えば、展開の公式は必ず覚えなければならないというわけではありません。なぜなら、展開の公式でやっていることはこちらのページでお話しした「それぞれのカッコの中から項を1つずつ選んで掛け合わせることをすべての組み合わせで行って足し合わせる」という基本通りのことを特別な式の場合で行っているだけです。

つまり、公式を使って展開できるものは基本通りのやり方でも展開できるのです。ですから、基本のやり方ができる人は式の展開の問題はすべて解くことができます。

ですが、数学を教えるほぼ全員の教師・講師が展開の公式を覚えることを推奨しています。(もしかしたら、はっきりと「覚えろよ」と言葉にしない先生もいるかも知れませんが、そういった人も授業では展開の公式を覚えていることが前提で授業が進んでいるはずです。)そして、このサイトでも展開の公式は覚えることをおすすめしています。それはなぜでしょうか。以下にいくつか理由を挙げます。

計算速度が上がる

公式を使わない場合、「この項とこの項を掛け算して、次はこことここを…」と1つずつ順番に掛け算をしていかなければなりません。対して、公式を使うと対応する文字に式を当てはめればあとは簡単な掛け算で展開が完了します。自分の頭を働かせて掛け算をする回数とその難易度が大幅に下がるので、計算速度が上がります。計算速度が上がれば、よりたくさんの問題が解けるようになり、難しい問題にもじっくりと時間を使えるようになります。

計算ミスが減る

公式を使えば、対応する文字に式を当てはめるという作業によって展開を完了できます。途中計算の難易度が大幅に下がるので、ミスが減ります。

因数分解の公式につながる

展開の公式は最悪忘れても項を掛け合わせていけば展開できます。一方、因数分解の公式は展開の公式を逆向きに見ることで作ることができますが、その因数分解は公式を忘れると時間がかかったり、難しい変形を思いつかなければいけなかったり、最終的に因数分解することができなくなったりします。因数分解を習うときに覚え直せばいいという話ではあるのですが、見る向きが逆なだけで実質的には同じ式なので、展開の公式として教わる段階から覚えておけば余計な労力をかけずに済みます。

その他の学習項目にも活かせる場合がある

因数分解のみならず、展開の公式は高校数学の他の分野の前提知識にもなります。具体的には分母の有理化では展開の公式を活用しますし、数Ⅱの二項定理は展開の公式の発展版と言える存在です。ベクトルでも展開の公式によく似た公式を学習します。そのときに、展開の公式をしっかりと覚えていたほうが学習がスムーズに進みます。

実際どうやって覚えるのか

展開の公式を覚えるべき理由はおわかりいただけたでしょうか。大事な公式なので早期に覚えていただきたいのですが、実際どうやって覚えるのがいいのでしょうか。答えは明白で、問題を解きまくるのが一番の近道です。というのも、公式の形だけ覚えていても、それを実際にどんな場面でどうやって使うのがわかっていなければ宝の持ち腐れです。公式の使い方まで理解するには問題を解くのが一番です。お手持ちの問題集に載っている問題を何回も解いて体に染み込ませましょう。

展開の公式

2元2次式

それでは、展開の公式を見ていきましょう。まずは、2種類の文字(2元)で2次式の展開の公式です。

展開の公式①

$$\begin{align*}[\mathrm{A}]\quad&(a+b)^2=a^2+2ab+b^2\\ [\mathrm{B}]\quad&(a-b)^2=a^2-2ab+b^2\\ [\mathrm{C}]\quad&(a+b)(a-b)=a^2-b^2\end{align*}$$

$\mathrm{THINK}$

それぞれの公式の左辺を基本のやり方で展開することで、公式が成立していることを確認せよ。

解答はこちら

$$\begin{align*}[\mathrm{A}]\quad&\hspace{1.3em}(a+b)^2\\&=(a+b)(a+b)\\&=a\cdot a+a\cdot b+b\cdot a+b\cdot b\\&=a^2+ab+ab+b^2\\&=a^2+2ab+b^2\end{align*}$$

$$\begin{align*}[\mathrm{B}]\quad&\hspace{1.3em}(a-b)^2\\&=(a-b)(a-b)\\&=a\cdot a+a\cdot (-b)+(-b)\cdot a+(-b)\cdot (-b)\\&=a^2-ab-ab+b^2\\&=a^2-2ab+b^2\end{align*}$$

$$\begin{align*}[\mathrm{C}]\quad&\hspace{1.3em}(a+b)(a-b)\\&=a\cdot a+a\cdot (-b)+b\cdot a+b\cdot (-b)\\&=a^2-ab+ab-b^2\\&=a^2-b^2\end{align*}$$

いずれも中学で学習済みのはずですので知っているものばかりだと思います。しかし、高校数学ではただ公式を知っていて使えるだけでは不十分です。公式の特徴をより深く知っておく必要があります。

公式[C]の右辺、つまり展開後の式を見てください。[A]や[B]と違って文字が$ab$である項が存在しません。すべて2乗の項で構成されています。この性質が応用上とても重要です。2乗というのは、根号や数学Ⅱで学習する虚数を除去するのに有効です。2乗の項だけで構成されているという特徴は根号や虚数が絡んだ問題で大きな力を発揮します。重要なので理解しておきましょう。

\(\mathcal{Core}\)|和と差の積の展開の公式

では、展開の公式を実際に使ってみましょう。

例《公式を使った展開①》

(1)$(x+5)^2$を展開します。

展開の公式[A]$$(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$$に$a=x,\,b=5$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(x+5)^2\\&=x^2+2\cdot x\cdot 5+5^2\\&=x^2+10x+25\end{align*}$$

(2)$(4p-7q)^2$を展開します。

展開の公式[B]$$(a-b)^2=a^2-2ab+b^2$$に$a=4p,\,b=7q$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(4p-7q)^2\\&=(4p)^2-2\cdot 4p\cdot 7q+(7q)^2\\&=16p^2-56pq+49q^2\end{align*}$$

(3)$(3x+4)(3x-4)$を展開します。

展開の公式[C]$$(a+b)(a-b)=a^2-b^2$$に$a=3x,\,b=4$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(3x+4)(3x-4)\\&=(3x)^2-4^2\\&=9x^2-16\end{align*}$$

$(ax+b)(cx+d)$型の展開式

続いて、$(ax+b)(cx+d)$の展開の公式と、それに類似した式についてです。

展開の公式②

$$\begin{align*}[\mathrm{D}]\quad&(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\\ [\mathrm{E_1}]\quad&(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd\\ [\mathrm{E_2}]\quad&(ax+by)(cx+dy)=acx^2+(ad+bc)xy+bdy^2\end{align*}$$

$\mathrm{THINK}$

それぞれの公式の左辺を基本のやり方で展開することで、公式が成立していることを確認せよ。

解答はこちら

$$\begin{align*}[\mathrm{D}]\quad&\hspace{1.3em}(x+a)(x+b)\\&=x\cdot x+x\cdot b+a\cdot x+a\cdot b\\&=x^2+bx+ax+ab\\&=x^2+(a+b)x+ab\end{align*}$$

$$\begin{align*}[\mathrm{E_1}]\quad&\hspace{1.3em}(ax+b)(cx+d)\\&=ax\cdot cx+ax\cdot d+b\cdot cx+b\cdot d\\&=acx^2+adx+bcx+bd\\&=acx^2+(ad+bc)x+bd\end{align*}$$

$$\begin{align*}[\mathrm{E_2}]\quad&\hspace{1.3em}(ax+by)(cx+dy)\\&=\,ax\cdot cx+ax\cdot dy+by\cdot cx+by\cdot dy\\&=\,acx^2+adxy+bcxy+bdy^2\\&=\,acx^2+(ad+bc)xy+bdy^2\end{align*}$$

いずれの公式も中学で学習済みの公式です。公式[D]では1次の項の係数が和、定数項が積になる点に注目しましょう。公式[E1][E2]については、展開のときよりも逆向きの因数分解のとき(たすき掛け)に使う場合のほうが印象的です。公式[E2]は、$b$と$d$の後ろに$y$がついたものです。公式[E1]において$b$や$d$に$y$を含めて代入してしまえばいいのでわざわざ別個に覚える必要がない式ではありますが、この形の式の展開を公式[E1]で行った際に、$y$をつけ忘れるミスがよく起こるため、あえて特別に分けて示しています。

例《公式を使った展開②》

(1)$(x+4)(x-3)$を展開します。

展開の公式[D]$$(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab$$に$a=4,\,b=-3$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(x+4)(x-3)\\&=x^2+(4-3)x+4\cdot(-3)\\&=x^2-x-12\end{align*}$$

(2)$(2x+5)(4x+1)$を展開します。

展開の公式[E1]$$(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd$$に$a=2,\,b=5,\,c=4,\,d=1$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(2x+5)(4x+1)\\&=2\cdot 4x^2+(2\cdot 1+5\cdot 4)x+5\cdot 1\\&=8x^2+22x+5\end{align*}$$

(3)$(x+3y)(3x-y)$を展開します。

展開の公式[E2]$$(ax+by)(cx+dy)=acx^2+(ad+bc)xy+bdy^2$$に$a=1,\,b=3,\,c=3,\,d=-1$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(x+3y)(3x-y)\\&=1\cdot 3x^2+\{1\cdot (-1)+3\cdot 3\}xy+3\cdot (-1)y^2\\&=3x^2+8xy-3y^2\end{align*}$$

3元2次式

続いては、3つの文字(3元)が登場する2次式の展開の公式です。

展開の公式③

$$[\mathrm{F}]\quad(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$$

$\mathrm{THINK}$

公式の左辺を基本のやり方で展開することで、公式が成立していることを確認せよ。

解答はこちら

$$\begin{align*}[\mathrm{F}]\quad&\hspace{1.3em}(a+b+c)^2\\&=(a+b+c)(a+b+c)\\&=a\cdot a+a\cdot b+a\cdot c+b\cdot a+b\cdot b+b\cdot c\\&=a^2+ab+ac+ab+b^2+bc+ac+bc+c^2\\&=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\end{align*}$$

ここからは、高校で初めて学習する公式になります。公式[F]の右辺はこの形(2乗の項が先、後ろは輪環の順)で把握しておくのが覚えやすく使いやすいでしょう。

2元2次式の公式[A][B]では項の間が$+$なのか$-$なのかで区別がありましたが、3元2次式でその区別をすると覚えなければいけない式がかなり増えてしまうため、公式[F]だけを覚えて引き算は「負の数の足し算」と捉えて代入しましょう。(下の例も参照)

例《公式を使った展開③》

(1)$(4l+3m+2n)^2$を展開します。

展開の公式[F]$$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$$に$a=4l,\,b=3m,\,c=2n$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(4l+3m+2n)^2\\&=(4l)^2+(3m)^2+(2n)^2+2\cdot 4l\cdot 3m+2\cdot 3m\cdot 2n+2\cdot 2n\cdot 4l\\&=16l^2+9m^2+4n^2+24lm+12mn+16nl\end{align*}$$

(2)$\qty(x^2-2x+3)^2$を展開します。

展開の公式[F]$$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$$に$a=x^2,\,b=-2x,\,c=3$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(x^2-2x+3)^2\\&=\qty(x^2)^2+(-2x)^2+3^2+2\cdot x^2\cdot (-2x)+2\cdot (-2x)\cdot 3+2\cdot 3\cdot x^2\\&=x^4+4x^2+9-4x^3-12x+6x^2\\&=x^4-4x^3+10x^2-12x+9\end{align*}$$

2元3次式

続いては、2元3次式の展開の公式です。徐々に覚えにくくなってくるので、意識的・集中的に覚えるようにしてみてください。

展開の公式④

$$\begin{align*}[\mathrm{G}]\quad&(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\\ [\mathrm{H}]\quad&(a-b)^3=a^3-3a^2b+3ab^2-b^3\\ [\mathrm{I}]\quad&(a+b)(a^2\color{magenta}{-}ab+b^2)=a^3+b^3\\ [\mathrm{J}]\quad&(a-b)(a^2\color{magenta}{+}ab+b^2)=a^3-b^3\end{align*}$$

$\mathrm{THINK}$

それぞれの公式の左辺を基本のやり方で展開することで、公式が成立していることを確認せよ。

解答はこちら

$$\begin{align*}[\mathrm{G}]\quad&\hspace{1.3em}(a+b)^3\\&=(a+b)(a+b)(a+b)\\&=a\cdot a\cdot a+a\cdot a\cdot b+a\cdot b\cdot a+a\cdot b\cdot b+b\cdot a\cdot a+b\cdot a\cdot b+b\cdot b\cdot a+b\cdot b\cdot b\\&=a^3+a^2b+a^2b+ab^2+a^2b+ab^2+ab^2+b^3\\&=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\end{align*}$$

$$\begin{align*}[\mathrm{H}]\quad&\hspace{1.3em}(a-b)^3\\&=(a-b)(a-b)(a-b)\\&=a\cdot a\cdot a+a\cdot a\cdot (-b)+a\cdot (-b)\cdot a+a\cdot (-b)\cdot (-b)+(-b)\cdot a\cdot a+(-b)\cdot a\cdot (-b)+(-b)\cdot (-b)\cdot a+(-b)\cdot (-b)\cdot (-b)\\&=a^3-a^2b-a^2b+ab^2-a^2b+ab^2+ab^2-b^3\\&=a^3-3a^2b+3ab^2-b^3\end{align*}$$

$$\begin{align*}[\mathrm{I}]\quad&\hspace{1.3em}(a+b)(a^2-ab+b^2)\\&=a\cdot a^2+a\cdot (-ab)+a\cdot b^2+b\cdot a^2+b\cdot (-ab)+b\cdot b^2\\&=a^3-a^2b+ab^2+a^2b-ab^2+b^3\\&=a^3+b^3\end{align*}$$

$$\begin{align*}[\mathrm{J}]\quad&\hspace{1.3em}(a-b)(a^2+ab+b^2)\\&=a\cdot a^2+a\cdot ab+a\cdot b^2+(-b)\cdot a^2+(-b)\cdot ab+(-b)\cdot b^2\\&=a^3+a^2b+ab^2-a^2b-ab^2-b^3\\&=a^3-b^3\end{align*}$$

公式[I][J]のピンクに着色したところは符号がごっちゃになりやすいので、注意しましょう。なお、公式[I][J]は展開の公式として用いることはあまり多くないですが、因数分解の公式としては頻出かつ非常に重要ですので、しっかりとおさえておいてください。

例《公式を使った展開④》

(1)$(x+3)^3$を展開します。

展開の公式[G]$$(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3$$に$a=x,\,b=3$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(x+3)^3\\&=x^3+3x^2\cdot 3+3x\cdot 3^2+3^3\\&=x^3+9x^2+27x+27\end{align*}$$

(2)$(2x-5y)^3$を展開します。

展開の公式[H]$$(a-b)^3=a^3-3a^2b+3ab^2-b^3$$に$a=2x,\,b=-5y$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(2x-5y)^3\\&=(2x)^3-3\cdot (2x)^2\cdot (5y)+3\cdot 2x\cdot (5y)^2-(5y)^3\\&=8x^3-60x^2y+150xy^2-125y^3\end{align*}$$

(3)$(x+4)(x^2-4x+16)$を展開します。

展開の公式[I]$$(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3$$に$a=x,\,b=4$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(x+4)(x^2-4x+16)\\&=x^3+4^3\\&=x^3+64\end{align*}$$

(4)$(2t-3)(4t^2+6t+9)$を展開します。

展開の公式[J]$$(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3$$に$a=2t,\,b=3$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(2t-3)(4t^2+6t+9)\\&=(2t)^3-3^3\\&=8t^3-27\end{align*}$$

$(x+a)(x+b)(x+c)$の展開式

展開の公式⑤

$$[\mathrm{K}]\quad(x+a)(x+b)(x+c)=x^3+(a+b+c)x^2+(ab+bc+ca)x+abc$$

$\mathrm{THINK}$

公式の左辺を基本のやり方で展開することで、公式が成立していることを確認せよ。

解答はこちら

$$\begin{align*}[\mathrm{K}]\quad&\hspace{1.3em}(x+a)(x+b)(x+c)\\&=x\cdot x\cdot x+x\cdot x\cdot c+x\cdot b\cdot x+x\cdot b\cdot c+a\cdot x\cdot x+a\cdot x\cdot c+a\cdot b\cdot x+a\cdot b\cdot c\\&=x^3+cx^2+bx^2+bcx+ax^2+acx+abx+abc\\&=x^3+(a+b+c)x^2+(ab+bc+ca)x+abc\end{align*}$$

公式としての価値は高くないですが、3次方程式の解と係数の関係(数Ⅱ)の学習の際に活用できるので、頭の片隅に入れておきましょう。

例《公式を使った展開⑤》

$(z+4)(z-5)(z-6)$を展開します。

展開の公式[K]$$(x+a)(x+b)(x+c)=x^3+(a+b+c)x^2+(ab+bc+ca)x+abc$$に$x=z, a=4,\,b=-5,\,c=-6$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(z+4)(z-5)(z-6)\\&=z^3+(4-5-6)z^2+\{4\cdot(-5)+(-5)\cdot(-6)+(-6)\cdot 4\}z+4\cdot (-5)\cdot (-6)\\&=z^3-7z^2-14z+120\end{align*}$$

3元3次式

展開の公式⑥

$$\begin{align*}[\mathrm{L}]\quad&(a+b+c)^3=a^3+b^3+c^3+3a^2b+3ab^2+3b^2c+3bc^2+3c^2a+3ca^2+6abc\\ [\mathrm{M}]\quad&(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-3abc\end{align*}$$

$\mathrm{THINK}$

それぞれの公式の左辺を基本のやり方で展開することで、公式が成立していることを確認せよ。

解答はこちら

$$\begin{align*}[\mathrm{L}]\quad&\hspace{1.3em}(a+b+c)^3\\&=(a+b+c)(a+b+c)(a+b+c)\\&=a\cdot a\cdot a+a\cdot a\cdot b+a\cdot a\cdot c+a\cdot b\cdot a+a\cdot b\cdot b+a\cdot b\cdot c+{}\\&\qquad a\cdot c\cdot a+a\cdot c\cdot b+a\cdot c\cdot c+b\cdot a\cdot a+b\cdot a\cdot b+b\cdot a\cdot c+{}\\&\qquad b\cdot b\cdot a+b\cdot b\cdot b+b\cdot b\cdot c+b\cdot c\cdot a+b\cdot c\cdot b+b\cdot c\cdot c+{}\\&\qquad c\cdot a\cdot a+c\cdot a\cdot b+c\cdot a\cdot c+c\cdot b\cdot a+c\cdot b\cdot b+c\cdot b\cdot c+{}\\&\qquad c\cdot c\cdot a+c\cdot c\cdot b+c\cdot c\cdot c\\&=a^3+a^2b+a^2c+a^2b+ab^2+abc+a^2c+abc+ac^2+{}\\&\qquad a^2b+ab^2+abc+ab^2+b^3+b^2c+abc+b^2c+bc^2+{}\\&\qquad a^2c+abc+ac^2+abc+b^2c+bc^2+ac^2+bc^2+c^3\\&=a^3+b^3+c^3+3a^2b+3ab^2+3b^2c+3bc^2+3c^2a+3ca^2+6abc\end{align*}$$

$$\begin{align*}[\mathrm{M}]\quad&\hspace{1.3em}(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\\&=a^3+ab^2+ac^2-a^2b-abc-a^2c\\ &\qquad +a^2b+b^3+bc^2-ab^2-b^2c-abc\\&\qquad +a^2c+b^2c+c^3-abc-bc^2-ac^2\\ &=a^3+b^3+c^3-3abc\end{align*}$$

これらの公式も使用頻度は高くありません。公式[L]は結果を知らずに展開していくとミスをする可能性が高いので、なんとなくの形だけでも知っておきたいです。公式[M]については展開の結果がシンプルなため、この等式を応用する場面がときどきありますので、覚えておきたい公式です。

例《公式を使った展開⑥》

(1)$(x+y+1)^3$を展開します。

展開の公式[L]$$(a+b+c)^3=a^3+b^3+c^3+3a^2b+3ab^2+3b^2c+3bc^2+3c^2a+3ca^2+6abc$$に$a=x,\,b=y,\,c=1$を代入すると、左辺が問題の式と一致します。右辺を計算すれば、展開が完了します。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(x+y+1)^3\\&=x^3+y^3+1^3+3x^2y+3xy^2+3y^2\cdot 1+3y\cdot 1^2+3\cdot 1^2\cdot x+3\cdot 1\cdot x^2+6xy\cdot 1\\&=x^3+3x^2y+3xy^2+y^3+3x^2+6xy+3y^2+3x+3y+1\end{align*}$$

(2)$(2x-3y+1)(4x^2+6xy+9y^2-2x+3y+1)$を展開します。

展開の公式[M]$$(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-3abc$$に$a=2x,\,b=-3y,\,c=1$を代入すると、左辺が問題の式と一致します……が、ぱっと見わからないですね。実際代入すると、

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\\&=(2x-3y+1)\{(2x)^2+(-3y)^2+1^2-2x\cdot(-3y)-(-3y)\cdot 1-1\cdot 2x\}\\&=(2x-3y+1)(4x^2+9y^2+1+6xy+3y-2x)\\&=(2x-3y+1)(4x^2+6xy+9y^2-2x+3y+1)\end{align*}$$

となり、公式[M]の形になっていることがわかります。今このページでは公式を使った展開について学習しているとわかっているのでまだ気付きやすいですが、突然出されると気付かず普通に展開してしまうかもしれません。気付くコツとしては、

  • 1つ目のカッコが3つの項、2つ目のカッコが6つの項を持っている
  • 1つ目のカッコの項である$2x$や$-3y$の2乗である$4x^2$や$9y^2$が2つ目のカッコに出現している

というあたりに気付いて「もしかしたら公式[M]の形になっているのでは?」と疑って、実際に代入してみて公式の形になっていればラッキーということになります。あとは右辺に代入して計算しましょう。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(2x-3y+1)(4x^2+6xy+9y^2-2x+3y+1)\\&=(2x)^3+(-3y)^3+1^3-3\cdot 2x\cdot (-3y)\cdot 1\\&=8x^3-27y^3+1+18xy\\&=8x^3-27y^3+18xy+1\end{align*}$$

公式まとめ

たくさん公式が登場したので、まとめておきます。それぞれの形の特徴や違いに注意しましょう。

展開の公式(再掲)

$$\begin{align*}[\mathrm{A}]\quad&(a+b)^2=a^2+2ab+b^2\\ [\mathrm{B}]\quad&(a-b)^2=a^2-2ab+b^2\\ [\mathrm{C}]\quad&(a+b)(a-b)=a^2-b^2\\ [\mathrm{D}]\quad&(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\\ [\mathrm{E_1}]\quad&(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd\\ [\mathrm{E_2}]\quad&(ax+by)(cx+dy)=acx^2+(ad+bc)xy+bdy^2\\ [\mathrm{F}]\quad&(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\\ [\mathrm{G}]\quad&(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\\ [\mathrm{H}]\quad&(a-b)^3=a^3-3a^2b+3ab^2-b^3\\ [\mathrm{I}]\quad&(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3\\ [\mathrm{J}]\quad&(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3\\ [\mathrm{K}]\quad&(x+a)(x+b)(x+c)=x^3+(a+b+c)x^2+(ab+bc+ca)x+abc\\ [\mathrm{L}]\quad&(a+b+c)^3=a^3+b^3+c^3+3a^2b+3ab^2+3b^2c+3bc^2+3c^2a+3ca^2+6abc\\ [\mathrm{M}]\quad&(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-3abc\end{align*}$$

練習問題

ここまでに登場した展開の公式をすべてバラバラに出題します。どの公式を使えばよいかを吟味しながら計算してください。

問題

練習問題 1-008【レベル:基礎確認~定期試験】

次の式を展開せよ。

(1)$(a-2)(a-3)(a-5)$
(2)$\qty(\dfrac{\,x\,}{3}+\dfrac{\,1\,}{2})^2$
(3)$(x+2y-3)(x^2-2xy+4y^2+3x+6y+9)$
(4)$(k^2+l)(k^4-k^2l+l^2)$
(5)$(3p-5)^2$
(6)$(3a-5b-7c)^2$
(7)$(4s+5t)(t-6s)$
(8)$(4-x)^3$
(9)$(3y-1)(9y^2+3y+1)$
(10)$(9m-4n)(4n+9m)$
(11)$(x+11)(x-6)$
(12)$(2x+3y)^3$
(13)$(4x+3)(2x+1)$
(14)$(2x-2y-z)^3$

解説

(1)展開の公式[K]$$(x+a)(x+b)(x+c)=x^3+(a+b+c)x^2+(ab+bc+ca)x+abc$$において、$x$を$a$に置き換えて$a=-2,\,b=-3,\,c=-5$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(a-2)(a-3)(a-5)\\&=a^3+(-2-3-5)a^2+\{(-2)\cdot(-3)+(-3)\cdot(-5)+(-5)\cdot(-2)\}a+(-2)\cdot(-3)\cdot(-5)\\&=a^3-10a^2+31a-30\end{align*}$$

(2)展開の公式[A]$$(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$$において、$a=\dfrac{\,x\,}{3},\,b=\dfrac{\,1\,}{2}$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}\qty(\frac{\,x\,}{3}+\frac{\,1\,}{2})^2\\&=\qty(\frac{\,x\,}{3})^2+2\cdot \frac{\,x\,}{3}\cdot \frac{\,1\,}{2}+\qty(\frac{\,1\,}{2})^2\\&=\frac{\,x^2\,}{9}+\frac{\,x\,}{3}+\frac{\,1\,}{4}\\&\qty(=\frac{\,4x^2+12x+9\,}{36})\end{align*}$$

(3)展開の公式[M]$$(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-3abc$$において、$a=x,\,b=2y,\,c=-3$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(x+2y-3)(x^2-2xy+4y^2+3x+6y+9)\\&=(x+2y-3)\{x^2\,\underbrace{+(2y)^2}_{+4y^2}\,\underbrace{+(-3)^2}_{+9}\,\underbrace{-x\cdot 2y}_{-2xy}\,\underbrace{-2y\cdot(-3)}_{+6y}\,\underbrace{-(-3)\cdot x}_{+3x}\}\\&=x^3+(2y)^3+(-3)^3-3\cdot x\cdot 2y\cdot (-3)\\&=x^3+8y^3+18xy-27\end{align*}$$

(4)展開の公式[I]$$(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3$$において、$a=k^2,\,b=l$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(k^2+l)(k^4-k^2l+l^2)\\&=\qty(k^2)^3+l^3\\&=k^6+l^3\end{align*}$$

(5)展開の公式[B]$$(a-b)^2=a^2-2ab+b^2$$において、$a=3p,\,b=5$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(3p-5)^2\\&=(3p)^2-2\cdot 3p\cdot 5+5^2\\&=9p^2-30p+25\end{align*}$$

(6)展開の公式[F]$$(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$$において、$a\rightarrow 3a,\,b\rightarrow -5b,\, c\rightarrow -7c$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(3a-5b-7c)^2\\&=(3a)^2+(-5b)^2+(-7c)^2+2\cdot 3a\cdot (-5b)+2\cdot (-5b)\cdot (-7c)+2\cdot (-7c)\cdot 3a\\&=9a^2+25b^2+49c^2-30ab+70bc-42ca\end{align*}$$

(7)次のように変形してみましょう。

$$(4s+5t)(t-6s)=(4s+5t)(-6s+t)$$

すると、展開の公式[E2]$$(ax+by)(cx+dy)=acx^2+(ad+bc)xy+bdy^2$$が使える形になりました。$x=s,\,y=t,\,a=4,\,b=5,\,c=-6,\,d=1$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(4s+5t)(t-6s)\\&=(4s+5t)(-6s+t)\\&=\{4\cdot(-6)\}s^2+\{4\cdot 1+5\cdot (-6)\}st+(5\cdot 1)t^2\\&=-24s^2-26st+5t^2\end{align*}$$

(8)展開の公式[H]$$(a-b)^3=a^3-3a^2b+3ab^2-b^3$$において、$a=4,\,b=x$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(4-x)^3\\&=4^3-3\cdot 4^2\cdot x+3\cdot 4\cdot x^2 -x^3\\&=64-48x+12x^2-x^3\\&=-x^3+12x^2-48x+64\end{align*}$$

(9)展開の公式[J]$$(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3$$において、$a=3y,\,b=1$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(3y-1)(9y^2+3y+1)\\&=(3y)^3-1^3\\&=27y^3-1\end{align*}$$

(10)次のように変形してみましょう。

$$(9m-4n)(4n+9m)=(9m-4n)(9m+4n)=(9m+4n)(9m-4n)$$

すると、展開の公式[C]$$(a+b)(a-b)=a^2-b^2$$が使える形になりました。$a=9m,\,b=4n$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(9m-4n)(4n+9m)\\&=(9m-4n)(9m+4n)\\&=(9m+4n)(9m-4n)\\&=(9m)^2-(4n)^2\\&=81m^2-16n^2\end{align*}$$

(11)展開の公式[D]$$(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab$$において、$a=11,\,b=-6$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(x+11)(x-6)\\&=x^2+\{11+(-6)\}x+11\cdot(-6)\\&=x^2+5x-66\end{align*}$$

(12)展開の公式[G]$$(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3$$において、$a=2x,\,b=3y$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(2x+3y)^3\\&=(2x)^3+3\cdot(2x)^2\cdot 3y+3\cdot 2x\cdot (3y)^2+(3y)^3\\&=8x^3+36x^2y+54xy^2+27y^3\end{align*}$$

(13)展開の公式[E1]$$(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd$$において、$a=4,\,b=3,\,c=2,\,d=1$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(4x+3)(2x+1)\\&=(4\cdot 2)x^2+(4\cdot 1+3\cdot 2)x+3\cdot 1\\&=8x^2+10x+3\end{align*}$$

(14)展開の公式[L]$$(a+b+c)^3=a^3+b^3+c^3+3a^2b+3ab^2+3b^2c+3bc^2+3c^2a+3ca^2+6abc$$において、$a=2x,\,b=-2y,\,c=-z$とすればよいです。

$$\begin{align*}&\hspace{1.3em}(2x-2y-z)^3\\&=(2x)^3+(-2y)^3+(-z)^3+3\cdot (2x)^2\cdot (-2y)+3\cdot 2x\cdot (-2y)^2\\&\quad +3\cdot (-2y)^2\cdot (-z)+3\cdot (-2y)\cdot(-z)^2+3\cdot(-z)^2\cdot 2x+3\cdot (-z)\cdot (2x)^2+6\cdot (2x)\cdot (-2y)\cdot (-z)\\&=8x^3-8y^3-z^3-24x^2y+24xy^2-12y^2z-6yz^2+6z^2x-12zx^2+24xyz\end{align*}$$

解答

$$\begin{align*}(1)\quad&a^3-10a^2+31a-30\\(2)\quad&\frac{\,x^2\,}{9}+\frac{\,x\,}{3}+\frac{\,1\,}{4}\quad\qty(\frac{\,4x^2+12x+9\,}{36}も可)\\(3)\quad&x^3+8y^3-18xy-27\\(4)\quad&k^6+l^3\\(5)\quad&9p^2-30p+25\\(6)\quad&9a^2+25b^2+49c^2-30ab+70bc-42ca\\(7)\quad&-24s^2-26st+5t^2\\(8)\quad&-x^3+12x^2-48x+64\\(9)\quad&27y^3-1\\(10)\quad&81m^2-16n^2\\(11)\quad&x^2+5x-66\\(12)\quad&8x^3+36x^2y+54xy^2+27y^3\\(13)\quad&8x^2+10x+3\\(14)\quad&8x^3-8y^3-z^3-24x^2y+24xy^2-12y^2z-6yz^2+6z^2x-12zx^2+24xyz\end{align*}$$

補足

展開の公式を類推して拡張する

展開の公式は基本的なものを暗記することが最重要ですが、それだけでなく、公式の法則性を推測して公式にない形の式を計算できるようにすることもとても重要です。具体的に見ていきます。

$\mathrm{THINK}$

$$\begin{align*}[\mathrm{A}]\quad&(a+b)^2=a^2+2ab+b^2\\ [\mathrm{F}]\quad&(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\end{align*}$$

これらの展開の公式から、$(a+b+c+d)^2$の展開後の式を予想せよ。

$(a+b+c+d)^2$を普通に展開すれば展開後の式を得ることはできますが、そうではなく展開する前にどのような結果になるのかを推測することが非常に重要です。

まず、展開前の式の特徴を理解しましょう。公式[A]の左辺は2つの項の足し算である多項式の2乗になっています。公式[F]では項が3つになっています。そして今、項が4つの場合に2乗するとどのような式を考えているのです。

次に、公式において展開後の式がどうなっているか見てみましょう。公式[A]と公式[F]の右辺で形が似ているところを探しましょう。項の順番が[A]と[F]で異なるので少しわかりにくいかもしれませんが、

  • それぞれの項の2乗がすべて現れている
  • 2つの項の積の2倍が現れている

このような点に気付くかと思います。公式[F]をもう少しよく見ると、「2つの項の積の2倍」の登場する2項の組み合わせは$ab,\,bc,\,ca$であり、これは$a,\,b,\,c$から作ることができる2項の組み合わせの全パターンです。

以上から、$(a+b+c+d)^2$を展開するとどうなるか考えましょう。

  • それぞれの項の2乗がすべて現れている
  • 2つの項の積の2倍が現れている
    • 登場する2項の組み合わせは左辺の項から異なる項を2つ選んで作れる全ての組み合わせ

発見したこれらの特徴から予測すると

$$(a+b+c+d)^2=a^2+b^2+c^2+d^2+2ab+2ac+2ad+2bc+2bd+2cd$$

という式になることが予想できます。実際、この式は正しいです。展開して確かめてみてください。

他の式でもやってみましょう。

$\mathrm{THINK}$

$$\begin{align*}[\mathrm{D}]\quad&(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab\\ [\mathrm{K}]\quad&(x+a)(x+b)(x+c)=x^3+(a+b+c)x^2+(ab+bc+ca)x+abc\end{align*}$$

これらの展開の公式から、$(x+a)(x+b)(x+c)(x+d)$の展開後の式を予想せよ。

展開前の式は、$(x+\bigcirc)$という形の式が複数掛けられています。展開後の式については、次の特徴があります。

  • $x$の次数が1ずつ減っていく
    • 最大の次数は$(x+\bigcirc)$の個数に一致し、最小の次数は$0$
  • 係数について
    • $x$の次数が最大の項の係数は$1$
    • $x$の次数が2番目に大きい項は$(x+\bigcirc)$の$\bigcirc$の部分を全て足し合わせたもの
    • 定数項は$(x+\bigcirc)$の$\bigcirc$の部分を全て掛け合わせたもの

これらから、

$$(x+a)(x+b)(x+c)(x+d)=x^4+(a+b+c+d)x^3+\cdots x^2+\cdots x+abcd$$

という式になることが予想できます。

さらに、勘がいい人ならこんなことに気付けるかもしれません。

  • $x$の次数が2番目に大きい項は$(x+\bigcirc)$の$\bigcirc$の部分を全て足し合わせたものだが、$x$の次数が3番目に大きい項は$(x+\bigcirc)$の$\bigcirc$の部分を2つずつ組み合わせてできる積を全て足し合わせたものになっている
    • ならば、$x$の次数が4番目に大きい項は$(x+\bigcirc)$の$\bigcirc$の部分を3つずつ組み合わせてできる積を全て足し合わせたものになっているのでは?

ここまで予測できれば、

$$\begin{align*}&(x+a)(x+b)(x+c)(x+d)\\&=x^4+(a+b+c+d)x^3+(ab+ac+ad+bc+bd+cd)x^2+(abc+abd+acd+bcd)x+abcd\end{align*}$$

と展開式を完成させることができます。

もう1つ練習しましょう。

$\mathrm{THINK}$

$$\begin{align*}[\mathrm{A}]\quad&(a+b)^2=a^2+2ab+b^2\\ [\mathrm{G}]\quad&(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\end{align*}$$

これらの展開の公式から、$(a+b)^4$の展開後の式を予想せよ。

展開前の式は$(a+b)$の累乗です。展開後の式は次のような特徴があります。

  • $a$の次数は展開前の式の次数から1ずつ減っていく
  • $b$の次数は$0$から1ずつ増えていく
  • 係数について、両端の項は$1$、それ以外は展開前の式の次数と等しい。

これらから、$(a+b)^4$の展開後の式は次のように予想できます。

$$(a+b)^4=a^4+4a^3b+4a^2b^2+4ab^3+b^4\quad \cdots\,?$$

ただ、この式は誤りで、実際に展開すると次のようになります。確かめてみてください。

$$(a+b)^4=a^4+4a^3b+\color{red}{6}a^2b^2+4ab^3+b^4$$

予想と実際の法則がずれるとこのように結果が違ってくる場合もあります。もちろん、正しい結果を知ることも重要ですが、それ以上にここまで行ってきた「既知の情報から共通する特徴を見つけ出し、未知の状況に応用する」プロセスがとても重要です。これは、高校数学で頻出する一般化という操作に通ずるからです。数学(ないしは科学全般)において、一般化は学問の発展のキーポイントです。大学入試においても一般化する力は重要ですので、ぜひ今のうちから練習しておきましょう。

数値計算への展開の公式の活用

展開の公式が使えるのは文字式の計算だけではありません。数値計算にも応用できることがあります。普通に筆算するよりも素早く計算できてミスも減らせるのでおすすめです。

$\mathrm{THINK}$

展開の公式を活用して、次の値をできるだけ簡単に(可能ならば暗算で)求めよ。

(1)${53}^2$
(2)${48}^2$
(3)$87\times 93$
(4)$62\times 63$
(5)${31}^3$
(6)$21\times 22\times 24$

解答はこちら

$$\begin{align*}(1)\quad&\hspace{1.3em}{53}^2\\&=(50+3)^2\\&={50}^2+2\cdot 50\cdot 3+3^2\quad \leftarrow 展開の公式[\mathrm{A}]を利用\\&=2500+300+9\\&=2809\end{align*}$$

$$\begin{align*}(2)\quad&\hspace{1.3em}{48}^2\\&=(50-2)^2\\&={50}^2-2\cdot 50\cdot 2+2^2\quad \leftarrow 展開の公式[\mathrm{B}]を利用\\&=2500-200+4\\&=2304\end{align*}$$

$$\begin{align*}(3)\quad&\hspace{1.3em}87\times 93\\&=(90-3)(90+3)\\&={90}^2-3^2\quad \leftarrow 展開の公式[\mathrm{C}]を利用\\&=8100-9\\&=8091\end{align*}$$

$$\begin{align*}(4)\quad&\hspace{1.3em}62\times 63\\&=(60+2)(60+3)\\&={60}^2+(2+3)\cdot 60+2\cdot 3\quad \leftarrow 展開の公式[\mathrm{D}]を利用\\&=3600+300+6\\&=3906\end{align*}$$

$$\begin{align*}(5)\quad&\hspace{1.3em}{31}^3\\&=(30+1)^3\\&={30}^3+3\cdot {30}^2\cdot 1+3\cdot 30\cdot 1^2+1^3\quad \leftarrow 展開の公式[\mathrm{G}]を利用\\&=27000+2700+90+1\\&=29791\end{align*}$$

$$\begin{align*}(6)\quad&\hspace{1.3em}21\times 22\times 24\\&=(20+1)(20+2)(20+4)\\&={20}^3+(1+2+4)\cdot {20}^2+(1\cdot 2+2\cdot 4+4\cdot 1)\cdot 20+1\cdot 2\cdot 4\\&\quad \uparrow 展開の公式[\mathrm{K}]を利用\\&=8000+2800+280+8\\&=11088\end{align*}$$

まとめ

まとめ
  • 展開の公式の暗記・活用は時間短縮とミスの低減の両方に効果あり
  • 展開の問題をたくさん解いて、公式とそれを使うべきタイミングを覚えよう
  • 「和と差の積は2乗の差」の公式は、結果が2乗の項のみになるのが重要
  • 展開の公式は数値計算にも使える